PAKKERINO///2017/06『庭屋敷町の日々暮らし』

雨の季節がやってきた。庭屋敷町のハイドランジア・ストリートは額アジサイも柏葉アジサイも咲きそろって、レインブーツにレインコートを着こんだマトリョーシカの娘さんたちが雨散歩を楽しんでいる(この通りには“非常に”局地的な雨が降る。きっとあめふらしが棲んでいるんだろう)。通りは坂道の小道で、道幅はだんだん狭くなり、迫ってくるあじさいをくぐりながら坂道を登っていくと、見たこともない黒褐色の花を咲かせたアジサイが咲きほこる、丸く開けた土地があるのだけれど、そこには一軒の家があり、その家にはニワトリの足が生えていて、それはつまり、ババ・ヤガーの娘さんの家なのだ。ババ・ヤガーの娘さんたちはほとんど町にはおりてこないから、家の仕事にいろんな工夫をしている。市場へ買い物に行く代わりに、野山で食べ物を取ってくるし、ブティックで服を買う代わりに、木の葉や木の皮を縫い合わせた特別の洋服を縫うことができる。食糧庫は見たこともない食材でいっぱいで、天井からは束になった薬草が下がっているし、奥の部屋には熊みたいなめぴかちゃんもいて、町暮しのマトリョーシカの娘さんたちはおっかなびっくり、それでも好奇心のかたまりになって、ババ・ヤガーの娘さんのお茶会に招かれる。ババ・ヤガーの娘さんたちの家から帰ってくると、マトリョーシカの娘さんたちは自分達のことを“爪を抜かれた猫みたい”と思ったりする。でもそれは、一瞬のこと。彼女たちには彼女たちの暮らしがあり、自分たちには自分たちの暮らしがある。マトリョーシカの娘さんたちはいつものエプロンをみにつけて、背中で素敵なちょうちょ結びにして、毎日の仕事にとりかかる。
6月のPAKERIは『庭屋敷町の日々暮らし』。マトリョーシカの娘さんたちの何気ない日常をきりとったマトが登場します。