6.屋根裏部屋の収集癖。

四人そろって旅に出ることを決めたからには、すべきことはひとつ。荷造りです。

チョコレートの好きなテントウムシの荷造りは簡単。チョコレートさえあればいいのですから。家にあったチョコレートを袋一つにまとめて、それでおしまい。大変なのは、小柄な茶色のくまです。くまというものは、収集癖があるのです。

屋根裏部屋に向かった鳥の巣頭は、くまが代々受け継いできたもの、新たに集めたもの、これからも集め続けて行ことしていたものもの……食器やら本やら、鉱石に流木(塩抜きされて、オブジェのように壁際につみあげられていました)、貝殻に植物の種、古い鍵に硝子瓶、釦にビーズ、折りたたんだ布に糸束、切手、絵葉書、陶器のおはじき(小柄な茶色のくまのお父さんは、ポターだったのです)を見て、目を丸くしました。

――ドゥークス!(嵐のあとの海辺のごとし!)
と、カシパンの骨もうなりました。

小柄な茶色のくまは、トランクの留め金をぱちんとあけて、屋根裏の荷物をつめはじめました。時折、なにかつぶやいているのは、それぞれにまつわる記憶の物語でしょう。チョコレートの好きなテントウムシは、ほこりっぽいのをいやがって、下にいってしまいました。天井のむきだしの梁からは、えたいのしれないものどもが、荷造りを興味津々のまなざしでみつめています。その目はまるく、まぶたがないのです。

――ぜんぶ持っていくわけには、いかないと思う。
鳥の巣頭のmemeは、言いました。

――入るだけにしておくよ。
と、小柄な茶色のくまは、真冬のコートをぎゅうぎゅうおしこみながら言いました。そのコートは、くまのひいおばあさんが着ていたものでした。

――必要なものっていう考え方もあると思うけど。
鳥の巣頭のmemeは、目にもあざやかな紫色のコートを、疑わしげな目で見つめながら言いました。

――ぼくが必要とされているんだ、このものたちに。
小柄な茶色のくまは、エメラルドのボタンがよごれないように、真綿でくるみながらいいました。

鳥の巣頭のmemeの驚いたことに、屋根裏の荷物はだんだんとその量を減らしていきました。行き場所はトランクの中です。まるで底なし沼のように、トランクは荷物をのみこんでいくのです。あの流木もトランクにおさまりました。梁にぶらさがったり、頬杖をついて見守っているえたいのしれないものどもは、小柄な茶色のくまが揺り椅子を仕舞い込んだ時には指笛を鳴らして拍手をおくりました。

――ドゥークス!(まるのみだな!)
と、カシパンの骨はわらいころげています。

とうとう、小柄な茶色のくまは、屋根裏部屋のものをすべてトランクの中にしまいこんでしまいました。鳥の巣頭のmemeは瞬きをすることもわすれ、今しも留め金のかけられたトランクを見つめるばかりです。

――そのトランクは、きっと、ものすごく重たいのでしょうね。
鳥の巣頭のmemeは、遠慮がちにたずねました。

――そうでもないよ。次は書斎に行かなくちゃ。その次は寝室、それから台所。最後は庭の物置だ。おじいさんからもらったジョウロとスコップを置いていくわけにはいかないからね。
小柄な茶色のくまは、トランクをひょいともちあげると、足早に屋根裏部屋を出て行きました。

鳥の巣頭は、まぶたのないえたいのしれないものども(数が減っているような気がしました)と目を交わし、やれやれ、と頭をふりました。

――あのトランクはきっと、魔法使いのおばさんか誰かから、ゆずりうけたものだと思う。
鳥の巣頭のmemeが言うと、カシパンの骨は、
――ドゥークス!(ちがいない!)
と、回転しながらカタカタ音をたてました。

こうして、小柄な茶色のくまはたった一つのトランクで、家をからっぽにしてしまったのです。