ブラシしっぽのリス、ジャムを煮る。

庭屋敷町の南には“十二の月の森”と呼ばれる場所があります。

この森の近くには、庭屋敷町のどの家の戸棚にも買い置きがある、
おいしいジャムを売る店があります。

店の主は、ブラシしっぽのリス。

ブラシしっぽのリスは、十二の月の森で果物をつみ、ジャムを煮るのです。




十二の月の森は、四季の森です。

といいますのは、この森には
“おおいなるマトリョーシカの娘たち”と呼ばれる
四人姉妹が暮らしており、
彼女たちはそれぞれが、十二か月からなる一年の、
四季にまつわる力を持っているのです。

真冬であっても、春の娘が力を使えば、
イチゴを摘むことができます。

桜の花を咲かせ、桜花のジャムを煮ることも、
真夏に椿の実の糖蜜ジャムを煮ることも……。



四人姉妹には、いつも会えるわけではありません。

けれど、次の季節、過ぎ去った季節からの小さなおくりものを、
今生きている季節の景色の中で、うけとることはあるようです。

たとえば、鳥の巣頭のmemeが、雪の中にすみれを見つけたように。